Q&A

法律相談について

無料法律相談は、債務整理(任意整理、自己破産、個人再生)について1時間、離婚、不倫、相続について、30分無料ということですが、時間が超過した場合はどうなりますか?

効率的にお話を聞くようにしているため、債務整理については、多くの事案で1時間以内に法律相談が終了しています。
離婚や相続について、複雑な事案の場合は、法律相談が30分を超過することがありますが、その場合は、超過時間10分ごとに1,832円を頂戴いたします。

法律的な問題かどうかよくわからないのですが、法律相談してもよいでしょうか?

もちろん、法律相談をお受けしています。
法律的な問題かどうかは専門家に相談して初めて分かることも多いです。
ですので、まずは法律相談をされることをお勧めいたします。

法律相談をすると、必ず事件の依頼もしなければならないのですか?。とりあえず、法律相談のみの対応はしてもらえますか?

もちろん、法律相談のみでもかまいません。実際、法律相談にいらっしゃる方の過半数は、法律相談のみの対応で終了しています。
弁護士が代理活動をしなくとも、ご本人様自身が行動することによって解決する種類の紛争も多く、ご本人様のご意向を尊重しています。
弁護士が無理に委任の勧誘をすることはありません。法律相談によるアドバイス対応のみのことの方が多いです。

借金問題について

借金問題(債務整理)の報酬体系がよく分かりません。色々な事務所の報酬体系を見ましたが、具体的に示してほしいです。

借金問題(債務整理)を扱う事務所によって報酬体系はまちまちですが、概ね、着手金、基本報酬、減額報酬、過払回収報酬の4要素があります。
事務所によっては、過払回収報酬を明示していないにもかかわらず、高率の過払回収報酬を設定しているところもあるので、依頼の前に、この4要素を確認した方がよいと思います。
○たとえば、減額報酬を10%取る報酬体系の場合、A社から元々80万円の借入をしていたところ、弁護士に依頼して30万円の分割支払いで和解できたとすると、減額報酬は、50万円(減額分)×10%(減額報酬率)=5万円となります。
○また、過払回収報酬を25%取る報酬体系の場合、A社から元々80万円の借入をしていたところ、弁護士に依頼して過払金を100万円回収したとすると、過払回収報酬は、100万円(過払回収金額)×25%(過払回収報酬率)=25万円となります。
○そうすると、減額報酬と過払回収報酬の両方を取る料金体系の場合、A社から元々80万円の借入をしていたところ、弁護士に依頼して過払金を100万円回収したとすると、減額報酬:8万円(80万円(減額分)×10%(減額報酬率))+過払回収報酬:25万円(100万円(過払回収金額)×25%(過払回収報酬率))となり、合計33万円にも達してしまいます。
このように、高額の報酬額となることがあることから、減額報酬と過払回収報酬については、事前に確認しておくことをお勧めいたします。
なお、私は減額報酬はいただいておりません。また、過払回収報酬率は、回収のために訴訟をする場合であっても、訴訟をしない場合と同一の19.8%(消費税込み)とさせていただいております。
そのため、弊事務所が茨城県に本支店のある法律事務所と司法書士事務所のウエブサイトを確認した限りでは、法テラスの料金を除いて、地域最安級の価格になっています。

弁護士と司法書士の違いが分かりません。借金問題(債務整理)等について、弁護士に依頼するのも司法書士に依頼するのも全く同じなのでしょうか?

弁護士と司法書士は権限が異なります。
弁護士には、簡易裁判所だけでなく、地方裁判所や家庭裁判所での代理権が認められています。しかし、司法書士は、司法書士の中で一定の試験に合格した「認定司法書士」であっても、簡易裁判所の代理権しか認められていません。
たとえば、140万円を超える過払金返還の訴訟をする場合は地方裁判所に訴訟を提起する必要がありますが、弁護士に依頼している場合は、弁護士が依頼人の代わりに地方裁判所に出頭することができます。
しかし、(認定)司法書士に依頼した場合、(認定)司法書士は、依頼人の代わりに地方裁判所に出頭できないので、依頼人ご本人様が平日の日中に地方裁判所の口頭弁論期日に出頭せねばなりません。
なお、「弁護士と司法書士の違い」というキーワードで検索すれば、参考となる記事が多数ヒットしますので、そちらの方もご参考にしてください。

ホームページを見ましたが、任意整理の着手金の金額が、5,500円~31,900円と幅がありました。これはどういうことですか?

ご依頼いただく業者、業者数、過払金の発生がどの程度見込めるか等に応じて、5,500円~31,900円の範囲内で見積らせていただいています。
一般的なケースでは、着手金を25,000円~31,900円と見積もることが多いですが、多額の過払金の発生が見込めるケースでは、着手金を5,500円と見積もることもあります。
事前にメールやお電話等でお問い合わせいただければ、見積らせていただきますので、ご安心ください。

家族に知られずに債務整理をしたいので、書類等が自宅に届くと困ります。家族に知られずに債務整理することは可能でしょうか?

弁護士等が代理人に就任した場合、書類の送付先を弁護士等の事務所に指定して手続を進めることができるので、書類が自宅に届くことは原則としてありません。
また、当事務所から直接ご家族宛てに連絡することは原則としてありません。
過払金返還請求のみの場合や少額の支払義務の残る任意整理については、ご家族に知られずに手続を終了することができる場合も多いです。
ただし、破産や民事再生の手続を取る場合は、資料の収集等について同居のご家族の協力が必要となることも多いため、同居のご家族に内緒で破産や民事再生の手続を取ることは避けるべきと思われます。

債務整理を依頼したいのですが、弁護士に依頼した後も、債権者への毎月の返済を継続していなければいけないのでしょうか?。債権者に返済するので精一杯で弁護士費用を払えません。

債務整理を依頼する場合、弁護士が受任した後は、債権者への毎月の返済を一旦止めていただきます。返済を中断している間に弁護士が債権者の債権の調査を行い、次に、返済について債権者と合意をし、その後で毎月の返済を再開します。つまり、債権者への毎月の支払を継続しつつ並行して債務整理を行うわけではありません。ご安心ください。

借金問題(債務整理)の任意整理の処理の流れを教えてください。

任意整理を前提とする事件処理の流れはおおむね以下のとおりです。
1 借入業者に対して受任通知の発送
→ これにより、ご本人様に対する直接の請求や催促を止めます。
2 取引履歴を取り寄せ、利息制限法に従って引きなおし計算
→ これにより、いわゆるグレーゾーン金利により払いすぎたお金がどの程度あるか、また、本当の借金額が分かります
3 グレーゾーン金利により払いすぎた金員(過払金)がある場合は、借入業者と交渉し取り戻す
→なお、私は過払金に利息を5%付けて請求し、この金額をベースに和解交渉しています。もちろん、最終的な和解金額は、ご本人様のご意向を尊重して決定いたします。
4 3につき、抵抗する業者に対しては、訴訟を提起して過払金を取り戻す。
→ 訴訟提起した場合、これまでの経験上、平均的には、訴訟提起から約1.5~2ヶ月程度で和解で終了することが多いです。もっとも、業者によって対応の仕方が異なるので、一概にはいえません。
5 利息制限法による引直計算をしても債務の残った業者については、過払金にて弁済または分割払いの和解案を提示。

もしも破産をした場合、職業や資格などが制限されることはありますか?

破産法では、破産手続開始決定を受けた破産者に対して、居住制限や郵便物等の回送による通信の秘密の制限が規定されています。また、破産法以外の各種法令においては、破産者について公法上、私法上の資格を制限しているものがあります。そのため、破産者が破産手続開始決定時にそれらの資格や地位を得ている場合には、その資格や地位を失うこともあります。
具体的な公法上の資格制限としては、弁護士(弁護士法7⑤)、公証人(公証人法14②)、司法書士(司法書士法5③)、税理士(税理士法4③)、公認会計士(公認会計士法4③)、社会保険労務士(社会保険労務士法5③)、不動産鑑定士(不動産の鑑定評価に関する法律16③)、警備業者、警備員(警備業法3①、14Ⅰ)、生命保険募集人、損保保険代理店(保険業法279Ⅰ①)、宅地建物取引業者、宅地建物取引士(宅地建物取引業法5Ⅰ①、18Ⅰ③)、建設業(建設業法8①、17)、賃金業者(貸金6Ⅰ②)があげられます。また、私法上の資格制限としては、後見人(民847③)、後見監督人(民852、民847③)、保佐人(民876の2②、民847③)、保佐監督人(民876の3②、民847③)、補助人(民876の7②、民847③)、補助監督人(民876の8②、民847③)、遺言執行者(民1009)などがあげられます。

法人の破産申立てについて、注意するべきことは何かありますか?

法人の破産申立てについては、取引先や金融機関などの一般債権者、法人に雇用されている従業員など、債権者が多数に上る可能性があります。債権者の漏れがないよう、注意する必要があります。
また、手形の不渡りなどによる混乱や公租公課の滞納があって滞納処分を受けることなく破産管財人に財産を引き継ぐために、受任後速やかに申立てをして、破産手続開始決定を受ける必要がある場合があります。
法人の破産申立てについては、迅速な申立てが必要となる一方で、十分な調査と資料の提供が必要となることも多く、担当する弁護士は、破産事件について習熟している必要があります。

破産申立てをして同時廃止となり、免責許可決定が確定したあとで破産開始前に発生していた過払金に気が付いたら、過払金の返還請求をすることは可能ですか?

同時廃止によって破産手続開始決定と同時に破産手続が終了した以上、破産者は自己の有する財産の管理処分権を失わないので、過払金返還請求権を行使することができます。
しかしながら、破産者が過払金返還請求権の存在を認識したうえで、破産手続による免責を得たあとで請求する意図でこれを隠匿したことが認められる場合には、信義則に反し、権利濫用に当たるとされることもあります。そして、このような事情が認められる場合には、さらに免責許可決定が取り消される場合もあります。
なお、免責許可決定が確定したあとに、破産開始前に発生していた過払金の返還請求をする場合には、過払金返還請求権の消滅時効が完成しているかを確認することも、忘れないで下さい。

法人の破産申立てと同時に、法人代表者の破産を申し立てる場合には、法人代表者の予納金や弁護士費用については、どうなりますか?

日本国内に営業所、住所、居所または財産を有する外国人は、日本で破産手続開始の申立てをすることができます。また、破産手続及び免責手続において、日本人と同一の地位を有します。
破産申立てには住民票を添付しますが、外国籍であっても日本の市町村に住所を有する者については、各自治体から住民票が発行されますので、容易に入手できると思われます。

法人の破産申立てと同時に、法人代表者の破産を申し立てる場合には、法人代表者の予納金や弁護士費用については、どうなりますか?

破産手続開始の申立てには、予納金の納付が必要です。予納金額は破産財団や負債等の事情を考慮して裁判所が定めるものとされています。また、申立代理人が依頼を受けて破産申立てに関する業務を行うためには、着手金等の弁護士費用が必要になりますが、これも予納金と同じように、破産手続開始決定前に準備をする必要があります。
予納金については、裁判所が基準を定めていることが多く、申立予定の裁判所に事前に確認をする必要があります。
法人と法人代表者に利害対立がなく破産管財人を同一とすることができ、財産状況報告集会等の期日を揃えるなど、破産管財人の業務負担を軽減できるといった事情がある場合、裁判所によっては、法人代表者の予納金が通常の個人破産の場合と比べて、低減されることもあります。
もっとも、法人破産の場合は、弁護士費用も高額となる可能性が高く、法人と法人代表者の双方で予納金が必要となるため、完全に法人の預貯金が底を尽いてから弁護士に依頼をすることは事実上困難であることが多いです。資金ショートしてから破産をすることを決断するのではなく、あらかじめ事態を予測したうえで早めに破産申立の相談を弁護士にしておくことを勧めます。

個人の破産申立てに際し、自宅不動産を保有したままで同時廃止申立てをすることができますか?

自宅不動産以外に資産のない個人の場合、自宅不動産に住宅ローンを被担保債権とする担保権が設定されており、担保権の被担保債権残額が不動産の換価価値を明らかに上回る場合には、自宅不動産を保有したまま同時廃止の申立てをすることが可能です。
そして、担保権の被担保債権残額が不動産の換価価値を明らかに上回る場合として、裁判所が、担保権の被担保債権残額と不動産の換価価値の比率を、運用で明確に定めていることが多いです。
同時廃止となるか管財事件なるかによって、申立予納金額が変わりますので、申立準備段階で事前に検討しておく必要があります。

破産手続開始決定までに、携帯電話やインターネットの契約が解除されていない場合も多いと聞きます。
そのまま継続して使用する場合には、どのように対応すればよいのですか?

個人の破産者の場合は、携帯電話やインターネットを継続利用したいと希望するケースが多いようです。その場合、契約を継続したままにして、破産者に利用料を負担してもらう対応を取ることが多いと思われます。
もっとも、破産者が法人の場合は、携帯電話やインターネットのような継続的供給契約については、通常、破産管財人は、これらの契約を解除することになります。そのため、法人名義の携帯電話等を破産者の代表者個人やその家族が使用している場合は、これらの解除がなされてしまうと考えた方がよいと思います。
なお、破産申立後開始決定前の給付についての請求権は財団債権になり、さらに一定期間ごとに債権額を算定すべき継続的給付については、申立日の属する期間内の給付についての請求権を財団債権とする規定があります(破産法55条2項)。

法人については破産申立てを行わず、法人代表者個人についてのみ破産申立てをして裁判所がこれを認めてくれますか?

必ず同時に法人の破産申し立てを行わなければならないという法の定めはありませんが、代表者個人のみの破産申立てがなされた場合には、多くの裁判所では、法人の破産申立も行うように要請されます。にもかかわらず、法人の破産申し立てを拒絶した場合、各地の裁判所によって運用が異なると思われますが、例外的な場合でない限り、代表者個人の破産事件について破産管財事件とし、高額な予納金を設定することが多いようです。
代表者個人についてのみ破産申立てが行われる背景として、法人分の破産予納金が工面できない、法人の破産申立てに必要な資料が事業停止後に散逸・処分されている等が、考えられます。しかし、代表者個人の破産申立てをする場合、できる限り法人についてもあわせて破産申立を行うことが求められます。
法人は事業を行っている以上、一定の資産を有していることが多いはずですが、この資産が事業停止前後の時期にどのように処分されたかが問題になります。本来、売却等をして債権者に配当にあてられるべき資産が不正に流出しているのではないかという問題です。法人の破産申立を行わないと、その点が解明されないままになってしまいます。
また、小規模な法人の場合、代表者個人の財産と法人の財産との区別がなされていなかったり、代表者が法人に対して貸付金を有していたり、法人が代表者に対して仮払金返還(精算)請求等の債権を有している場合も多くあります。このような場合、法人の財産調査がなされなければ、代表者個人の財産状況も正確に把握できないことになります。
さらに、法人の整理がなされないまま代表者個人のみが破産手続開始決定を受けると、法人と代表者の委任関係は終了する(民法653条2号)ため、当該法人は代表者のいない状態となり、円滑な清算手続を取ることが難しくなってしまいます。
このような事情があるので、法人についても破産申立てをすることが要請されているのです。
逆に、このような弊害事情が例外的に存在しないことが明らかな場合は、例外として、裁判所が、低額な予納金での代表者個人の破産手続開始または同時廃止による破産手続開始を認める余地もあるように思います。

個人の自己破産についてですが、税金の滞納があります。破産をすると、税金の滞納金も免責を受けることができますか?

個人の破産者に関わる主な税金には、①所得税、②住民税、③固定資産税・土地計画税、④自動車税・軽自動車税などがあげられます。
自己破産をすると、これらの税金の支払いが免除されると思う方も多いかもしれませんが、税金は「非免責債権」に該当するため、支払の免除には該当しません。破産をしても、引き続き支払いの義務があります。
また、非免責債権には、税金以外にも、国民健康保険の保険料や養育費などがあります。
税金の支払いは怠らないようにしましょう。

弁護士から受任通知が発送されると、必ず、債権者から催促の連絡が直接来なくなるのでしょうか?

自己破産、個人再生、任意整理、どの債務整理の手続をとる場合でも、弁護士は、各債権者に対して受任通知を発送します。
弁護士は、通常、各債権者に対して、受任通知の中で、債務者に直接請求をせず、代理人に連絡をするように求めます。それにより、通常は、債権者は債務者に対して直接の連絡をしなくなります。
また、貸金業法21条第1項9号は、受任通知を受領した債権者である貸金業者が、電話、FAX、訪問などの方法で債務者に対して直接の取立てをすることを禁止しています。貸金業法21第1項9号は、債権者が消費者金融業者など貸金業法の定める貸金業者について適用されるものの、そうでない個人や一般の買掛金業者の場合は、貸金業法が適用されません。
また、貸金業者も、裁判所に訴訟を起こすことはでき、訴状は債務者本人に送達されます。そのため、必ず、債権者からの連絡が全て遮断されるわけではないことは注意してください。

新型コロナウィルスの影響で仕事がなくなり、このままでは事業の継続が困難です。どのような対策がとれますか?

現在、新型コロナウィルス感染拡大防止のため、政府から自粛要請が出され、多くのイベント等が中止されています。
また、外出自粛要請により外食を控えることも増え、自営業の方や中小企業にとっては深刻な経済影響が生じていることと思われます。そのため政府は「新型コロナウィルス感染症に関する緊急対応策 第2弾」(新型コロナウィルス感染症に関する緊急対応策 第2弾)を発表しました。
この緊急対応策第2弾では「国内の感染拡大を防止するとともに、現下の諸課題に適切に対処するため、政府として万全の対応を行う」こと、「今後とも、感染の状況ととみに、地域経済及び世界経済の動向を十分注視し、必要な対策は躊躇なく講じていく」ことが明言されています。
(1)感染拡大防止策と医療提供体制の整備、(2)学校の臨時休業に伴って生じる課題への対応、(3)事業活動の縮小や雇用への対応、(4)事態の変化に即応した緊急措置等の4つの柱からなる緊急対応策ですが、自営業の方や中小企業にとって最も重要となるのは「(3)事業活動の縮小や雇用への対応」になるでしょう。
政府は、事業活動の縮小や雇用への対応として「強力な資金繰り対策」を提言していますが、融資制度は借入金であり、返済義務を負います。ですので、コロナウィルス感染症に伴う業績の悪化などにより事業の継続が困難となった場合には、債務整理等も視野に入れる必要が出てくる可能性もありますので、ご注意ください。

私は個人再生を考えているのですが、税金の滞納については、どうすればよいでしょうか?

滞納公租公課については、個人再生手続で減額はされません。これについては、破産手続の非免責債権も同じです。自己破産の際の税金滞納の場合、①所得税、②住民税、③固定資産税・都市計画税、④自動車税・軽自動車税、および、税金と同様に国民健康保険などの保険料などは「非免責債権」に該当し、免責されません。個人再生の手続の場合も、「一般優先債権」(民事再生法122条1項)として、再生手続によらないで随時弁済をしなければなりません。
自己破産の場合と違って個人再生の場合では、税金の滞納が再生計画の履行可能性に重大な悪影響を与える可能性があり、再生計画の履行可能性がない場合は、再生手続の開始決定がなされない,再生計画が認可されない等の事態に発展することがあります。
そのため、個人再生手続開始の申立前に、税金などの滞納は完納するか、完納が困難な場合には、猶予期間や分割納付などを検討する必要があります。実務上は、分納誓約という方法が取られることが多いです。

私は破産申立を予定していますが、居住している区分所有マンションの管理費を滞納しています。この管理費は支払うべきものですか?また、管理費を滞納したままマンションを任意売却した場合、この滞納している管理費はどうなりますか?

破産手続の中で免責決定を受けると、破産手続開始決定前に滞納していたマンション管理費は免責されますので支払う必要はなくなります。
他方で、破産手続開始決定後に発生した管理費については、破産手続開始後に新たに発生した債務となるので、免責の対象になりません。
また、マンションの管理費、修繕積立金、組合運営費は、「規約若しくは集金の決議に基づき他の区分所有者に対して有する債権」(区分所有法7条1項)に該当します。
マンション管理費が滞納されている状況で区分所有権が譲渡された場合、任意売却であっても競売手続であっても、特定継承人(マンションの新しい買主)にも滞納管理費の支払義務が承継されることになります(区分所有法8条)。
そうすると、任意売却または競売手続後に、特定承継人が滞納管理費を支払った場合は、破産手続開始決定後に生じた滞納管理費については、特定承継人があなたに求償請求する可能性があります。

破産の申立に関して、同時廃止と破産管財との振り分けに関する一般的な基準について教えてください。

まず、振分基準についてですが、破産法では「破産財団をもって破産手続の費用を支弁するのに不足すると認めるとき」は同時廃止とすると定めています(破産法第216条)が、明確な振分基準については定めていません。
ですので、振分基準については、各地の地方裁判所がそれぞれ基準を定めており、各地の裁判所によって基準が異なっています。
また、同時廃止事件となるか破産管財事件となるかの振分基準については、2017年以降、全国で見直しされています。最新の知識が必要になりますので、借金問題に詳しい弁護士に相談されることをおすすめします。
なお、2019年時点での水戸地方裁判所管内において管財事件となる原則的事案は、
(1)33万円以上の現金がある場合
(2)現金以外の財産について、財産項目ごとの合計額が20万円以上になる場合
(3)資産の状態が明らかでなく20万円以上の資産が存在する可能性のある場合
(4)法人及び法人の代表者の場合
(5)個人事業者(過去に事業を営んでいた者を含む)の場合
(6)免責不許可事由(浪費やギャンブル等)が存在するまたはその可能性が高いため、免責調査を経ることが相当な場合とされています。

離婚、不倫、親権について

夫が不倫していることが分かりました。離婚したいのですが、夫は離婚届にサインしてくれません。サインしてもらえないといつまでも離婚できないのでしょうか?

離婚届にサインしてもらえない場合でも、家庭裁判所に調停申立をして離婚するための話し合いをすることもできます。もっとも、旦那さんが、調停の場でも離婚することを了解しない場合は、調停は不成立になります。
しかし、その場合は、さらに裁判所に訴訟をおこすことができます。訴訟をした場合、旦那さんの了解がなくても、不倫(不貞行為)などの離婚原因等が認定されれば、離婚することができます。

妻の携帯電話のメールを見てしまい、妻が不倫していることが分かりました。相手はどこの誰か全く分かりません。慰謝料を取りたいのですが、どうすればいいですか?

調査会社等の調査によって、携帯電話のメールアドレスや電話番号から不倫相手の氏名や住所が分かることがあります。
また、調査会社を使って、不貞現場の証拠を確保すれば、慰謝料請求できる可能性が高まります。

妻が不倫している気配があるのですが、証拠がつかめません。興信所や探偵に依頼して、不倫現場の証拠を押さえようと思うのですが、不倫現場の証拠さえあれば、必ず慰謝料は取れるのでしょうか?不倫相手からも慰謝料を取りたいのですが。

不倫現場の証拠があっても、婚姻関係破綻後に不倫した場合は、慰謝料が取れないことがあります。
婚姻関係破綻前に奥さんが不倫している証拠をつかむようにしてください。婚姻関係の破綻は、別居しているか否かが一つの目安になることが多いです。

行政書士に、不倫相手に対する慰謝料請求を依頼したのですが、不倫相手が慰謝料を払う意思を示しません。なぜ、行政書士さんは、私の代わりに不倫相手と交渉してくれないのですか?

行政書士は、離婚や不倫事件において、紛争性がある場合、あなたの代理人として交渉することはできないという見解があります。
また、行政書士は、調停や裁判であなたの代理人になることはできません。
調停や裁判に至るまで一貫して代理人として交渉できるのが弁護士です。
知らずに行政書士に依頼する方もいるようですが、弁護士と行政書士とは権限が異なりますのでご留意ください。

妻が不倫していることが分かり、離婚協議をしているのですが、幼い子どもの親権を巡って争いになっています。不倫した妻が親権を取るということが許されるのでしょうか?

裁判所が、どちらの親を親権者とするか判定する場合、不倫を行ったことを悪い材料として評価する見解もあります。しかし、かりに悪い材料と評価するとしても、決定打のような強い判断材料にはなりません。
子どもの親権は、どちらの親が親権者となった方が、子どもが健やかに成長できるかという「子どもの福祉」の観点から決されます。
ですので、不倫した妻であっても、道徳的な非難はともかくとして、子どもにとっては良い母親ということがありえます。
裁判所は、子どもが幼い場合、母親を親権者として認めることが多く、父親としては、自ら家庭を壊した母親に親権が認められてしまうのは釈然としないものもありますが、不倫の点は、慰謝料の問題として評価されることになります。

男親ですが、子どもの親権を取ることができますか?

男親だから子どもの親権を取ることができないということはありません。子どもがまだ幼い場合は、一般的には母親有利と言われていますが、それまでの監護養育状況等にもよるので、詳しくはご相談ください。

面会交流を円滑に行うためのツールはありませんか?

監護親と非監護親が協力しながら面会交流を行うことが望ましく、お子さんの状況についてできるだけ情報共有を図る方がよいと考えます。
もっとも、監護親と非監護親の間には心理的な葛藤があることも多いため、円滑な情報共有を図るためのツールとして、明石市作成の「こどもと親の交流ノート」を利用することをお勧めしています。同市のウェブサイトからダウンロードできますので内容をご確認ください。

最高裁判所が、養育費算定表を見直して、高額化する方向で改定し、2019年12月にこれを公表すると聞きました。私は、すでに離婚して養育費の取り決めをしているのですが、私も、新しい養育費算定表を根拠にして、養育費の増額を求める調停を起こそうと思っています。養育費の増額は認められるでしょうか?

養育費算定表が改定されたことをのみを理由として、養育費の増額を求める場合、相手方が増額を拒絶すると、調停は成立せず、審判になります。審判で養育費の増額を認めてもらうことは、おそらく困難と予想されます。
なぜなら、一旦合意した養育額を変更するためには、「事情の変更」が必要とされているところ、最高裁が養育費算定表を改定したという事情は、「事情の変更」とは評価されないと考えられるからです。
子どもの親の収入の変動、新たな子の誕生等の扶養家族数の変動等の事実は、「事情の変更」にあたると考えられますが、最高裁が養育費算定表を改定したことは、前提となる基準を改定したものに過ぎず、「事情の変更」にはあたらないと判断されると思います。
また、養育費算定表は法律ではありませんが、基準として機能していた点で規範や法に似ているところ、法律の場合、法律が改正されても、改正法が過去に遡って適用されることは例外です。そのため、養育費算定表の改定も、遡って過去の法律関係(過去にした養育費合意)を変更させることを予定したものではなく、「事情の変更」には該当しないと判断される可能性が高いと思われます(仮に、養育費算定表の改定のみを理由に養育費増額を認めれば、全国の家庭裁判所に養育費変更申立が激増し混乱が生じるので、その意味でも、「事情の変更」として認めないと予想されます。)。
もっとも、前の養育費合意後に、収入や扶養家族数の変動等があれば、審判によっても養育費額が変更される可能性は高く、その際は、最高裁が改定した新しい養育費算定表が基準として適用される可能性が高いと考えられます。

ある日突然、配偶者から離婚を切り出されましたが、離婚はしたくありません。このような時にはどうすれば良いですか?

まずは
1、相手を否定しない
2、感情的は話し方をしない
3、第三者を交えた話し合いの場を持つ
などが挙げられます。
また、本籍地などの市区町村役場に「離婚届不受理申出」をしておくことも出来ます。これは、離婚届が提出された場合でも、受理をしないようにしてもらうための制度で「勝手に離婚届けが出されてしまった」などといった事態を防ぐことが出来ます。

浮気をしてしまって離婚することになりましたが、親権は絶対に渡したくありません。どうすればいいですか?

法律上では、不倫と親権は無関係であると考えられています。そして親権は、監護の継続性を第一に判断されますので、不倫した側でも親権を取得することは可能です。
とはいえ、相手方からは「不倫した人に子供は任せられない」などと主張をしてくることも予想されますので、親権者をどちらにするか合意が難しいこともあります。

妻と離婚することになりましたが、子どもがまだ幼いことから妻が親権者となりました。その場合、私と子どもは法律関係がなくなるのですか?

親権者でなくなっても、子どもの親であることは変わりません。
また、法律上も、親権者でなくなった親子間でも面会交流が認められたり、相続や扶養義務等が認められます。具体的には、以下のとおりです。
①相続人となる……親子であると、親が亡くなって相続が開始すると、その子は親の第1順位の相続人となります。また、子どもが亡くなると、親は亡くなった子の第2順位の相続人となります。
②扶養の権利義務……血の繋がった親子は直系血族となりますが、直系血族は互いに扶け合わなければならず、お互いに扶養する義務があります。
③生命侵害の不法行為の場合の慰謝料請求権……他人の不法行為によって被害者が死亡した時は、被害者の父母、被害者の子は加害者に対して慰謝料請求をする権利が認められます。

離婚の際に3歳になる子どもの親権者となりました。そもそも、親権にはどのような意味があるのですか?

子どもは、大人になるまでは自分の力で生きて行くことが出来ません。そのため、他の人から面倒を見てもらったり、経済的な援助を受けます。また、子どもが財産をもっていればその財産を適切に使うための援助も必要です。このように子どもを監護・教育し、財産保全を行う資格を親権といいます。
親権の法律上の具体的内容としては、以下の通りです。
①身上監護権:身上監護権は、独立の社会人としての社会性を身につけるために、子どもを肉体的に監督保護し、また、精神的な発達を図るために教育する義務です。
②財産管理権:財産管理権は、子どもが財産を持っているときに、その財産を管理し、また子どもの財産上の法律行為について、子どもを代理したり子どもが法律行為をすることに同意したりするものです。

「配偶者からの暴力」の定義を教えてください。

DV防止法とは、配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律で、人権擁護と男女平等の実現を図り、配偶者からの暴力を防止し、被害者を保護するための施策を講ずることを目的として、配偶者からの暴力に係る通報、相談、保護、自立支援等の体制などを定めています。
このDV防止法でいう「配偶者からの暴力」とは、身体に対する不法な攻撃であって、生命または身体に危害を及ぼす暴力、またはこれに準ずる心身に有害な影響を及ぼす言動をいいます(配偶者暴力1①)。

いわゆる「熟年離婚」というものになりそうです。熟年離婚だからこそ気を付けた方がいいことは、何かありますか?

一般的にですが、婚姻期間が短い場合と比べて、その婚姻中に築かれた夫婦の共有財産が多額に上ると思われること、また、退職金などの財産が有り得ることが考えられます。
一方で、離婚後の再就職が困難になりますので、双方の生活が経済的に保証されるように適切な解決を図る必要性があり、離婚の際の財産分与が占める重要性は大きくなると思われます。
また、特有財産を立証するための資料が現存していないことも多く、協議が紛糾することが多いので、特有財産を証明する資料を残しておくことが大切です。

10年以上日本に在住している外国人同士の夫婦です。事情があって離婚することになりましたが、日本での離婚手続は行えますか?

外国人同士のご夫婦でも、日本で離婚手続を行うことはできます。もっとも、どの国の法律が適用されるかにより、どの離婚手続を利用することができるかが決まりますし、また、日本で離婚手続を取ったとしても、その離婚手続の効力が外国で認められるかどうかについては、その外国の法律によるため、慎重な検討が必要です。
協議離婚が可能か、判決離婚しか認められないのかといった問題については、通則法27条の離婚の準拠法の規定が適用されると考えられています。
同条による外国人夫婦の離婚の準拠法は、以下のとおりです。
①夫婦の本国法が同一である場合には、その同一本国法
②同一本国法がない場合において、夫婦の常居所地法が同一であるときは、その同一常居所地法
③同一本国法も同一常居所地法もないときには、夫婦に最も密接な関係にある地の法
この通則法27条の規定により、どの国の法律が適用されるかを決定します。

離婚をする予定です。私の夫は最低の人間なので、子どもに会わせて良い影響があるとは思えません。別居生活が始まっていますが、子どもも夫のことを話そうとしません。子どもも会いたいと思っている様子はないので、面会交流をしないことにすることはできますか?

お子さんが本心から面会交流を拒否している場合は、直接会う等の面会交流をしないことにできることもありますが、お子さんがお母様の意向に迎合して、お父さんと会いたくないと言うことがあるので、お子さんの真の意向は、慎重に判断する必要があります。
なお、名古屋市の山田万里子弁護士のコラム(面会交流について思うこと)が、とても分かりやすくこの点を説明していますので、外部サイトですが、こちらの記事もご覧ください。

離婚をするにあたって、子どもの親権をお互いに主張して対立しています。私は一日も早く離婚を成立させて再婚したいと思っています。とりあえず相手に親権を譲って離婚をして、離婚を成立させた後から親権者を自分に変更することはできますか?

離婚の成立後に親権者を変更することは可能ではありますが、離婚成立後の親権者の変更は、父母間の話し合いだけでは認められませんし、そのハードルも高いです。
まず、離婚の際に定めた親権者を変更しようとする場合には、必ず、家庭裁判所に親権者変更の調停もしくは審判を申し立てなくてはなりません。これは、親権者が簡単に変更される事態が起これば、子どもが安定的な生活ができなくなるので、子どもの福祉や利益に悪影響を及ぼしてしまう可能性があるためです。
そのため、家庭裁判所では「親権者を変更することが子の利益になるのか」という観点から、親権者変更の判断をします。
そして、親権について争いがある場合、離婚時に親権争いをするのと異なり、親権者変更を認めるハードルはさらに高いと一般に言われています。そのため、「離婚した後から親権者を変更できるから大丈夫」と安易に考えない方がよいと思います。

離婚をするときに、前妻と、子どもの養育費については毎月10万円、と決めました。しかし、将来、私が再婚をして子どもが生まれた場合、毎月10万円もの養育費を支払い続けることができるのかが心配です。養育費が支払えない場合は、どうすればいいのでしょうか。

離婚の際に、養育費について協議して決めた場合でも、調停や審判で決められた場合でも、取り決め後に事情の変更が生じ、養育費の金額を変更したいと考えることもあるかと思います。その場合、相手と合意をすることができれば、養育費額を変更することができます。
しかし、当事者間の直接の話し合いで合意することができない場合は、家庭裁判所に養育費減額調停申立をして、調停で話し合うこともできます。
さらに、調停でも合意をすることができない場合は、家庭裁判所の審判によって、養育費額変更の可否を決めることになります。
なお、審判によって、養育費額の変更が認められるのは、当事者の扶養家族数の変動や収入の変動等の事情が生じた場合が一般的です。養育費の当初合意をした後に生じた「事情の変更」が、合意当初予見することができないものであるか、それとも当初合意時に織り込み済みのものであったかが争点になります。

息子夫婦が離婚することになりました。どちらが未成年の孫を引き取るかで争っていますが、数年前から孫は、私たちの家で面倒を見ており、息子夫婦は孫とは別々に暮らしています。離婚後も私たちが孫を引き取って育てていくことは可能でしょうか?

親権者となれるのは親だけですが、祖父母であっても、お孫さんと養子縁組をすれば親権者となることはできます。ですが、お孫さんが未成年者である場合は、現在の親権者である父と母の同意がなければなりません(民法797条1項)。
親権にこだわらないのであれば、息子さんが親権者となり、祖父母であるご相談者様達が監護者となる方法もあります。息子夫婦がご相談者様を監護者とすることを承諾すればよいですが、そうでない場合は、祖父母であるご相談者様が家庭裁判所に監護者指定の調停(審判)を申し立てることができるか否かが問題となります。
この申立てができるのは原則父母とされていますが、父母が子どもを虐待している事案等では、祖父母からの申立てが認めた例もあります(金沢家裁七尾支部平成17年3月11日審判(家月57巻9号47頁))。また、親権者にそのまま親権を行使させると子の福祉を不当に阻害することになるような場合は、子の伯母が自身を監護者に指定するよう申立をし、それが認められた事案もあります(大阪高決平成11年8月23日)。
ご参考にしてください。

配偶者が子どもを虐待しています。これ以上一緒に暮らすことはできないので、離婚を考えています。虐待を理由に離婚を請求することはできますか?

離婚をすることに、配偶者が同意している場合、離婚の理由は特に問われることはありません。しかし、離婚に向けて配偶者の同意が得られていない場合、民法770条1項各号の規定する離婚原因(1号:配偶者の不貞行為、2号:配偶者による悪意の遺棄、3号:配偶者が3年以上生死不明、4号:配偶者が強度の精神病に罹患し回復の見込みがないこと、5号:その他婚姻を継続し難い重大な事由)に該当すると認められた場合に、裁判での離婚が可能になります。
配偶者の子どもに対する虐待の程度によっては「5号の婚姻を継続し難い重大な事由」に該当し、離婚原因になる可能性があると思われます。
この際、配偶者による子への虐待があったことの証拠が必要になる場合もありますので、証拠として有効なものは何か、どのように証拠を集めれば良いのか等については、個別に弁護士にご相談ください。

子どもを連れて夫と別居していますが、夫から子どもを返せと言われました。別居中でも、法律で、私が子どもを育てることを認めてもらうことができますか?

民法では、親権者とは別に「子の監護をすべき者」である監護者を定めることを認めています(民法766条)。
親権とは、未成年者の子どもを監護、養育し、その財産を管理し、その子どもの代理人として法律行為をする権利や義務のことをいいますが、その親権のうちの監護権のみを有する者を「監護者」といいます。簡単に言えば、監護権とは、子どもと暮らしてその世話や教育をする権利義務といえます。
監護権は、親権の一部ですので、原則、親権者が、子どもと暮らしてその世話や教育をします。しかし、親権者と監護者を別々に定めることも可能です。
当事者の協議で監護者を決めることができれば、監護者になることができます。しかし、当事者の協議がまとまらない場合でも、家庭裁判所に監護者の指定を求める調停や審判を申立てることができます。

私は数年前、子どもを連れて離婚しましたが、近く、再婚をする予定になっています。再婚して後夫が私の子どもと養子縁組をした場合、子どもに対する扶養義務は、前夫と後夫のどちらにあるのでしょう?

再婚相手となる新しい夫(後夫)があなたの連れ子と養子縁組をした場合、第一次的な扶養義務を負うのは養親(後夫)となります。
それは、再婚相手と連れ子が養子縁組をすると、養子は再婚相手の嫡出子となる(民法809条)からです。だからといって、親権者でない実親(前夫)の扶養義務が消滅するわけではなく、養親の次順位の扶養義務者となります。そのため、後夫の収入が乏しく経済力がない場合は、前夫が養育費を支払って現実に扶養をしなければならないことになります。
再婚相手となる新しい夫(後夫)と連れ子が養子縁組をしない場合は、扶養義務を後夫が負うことはありませんが、連れ子から見ると後夫も三親等内の親族に当たりますので、家庭裁判所が「特別の事情」があると認めれば、扶養の義務を負わせることができるとされています(民法877条2項)。

内縁の相手から関係を一方的に解消された場合にも、離婚の場合と同じように財産分与や慰謝料を請求することはできますか?

内縁関係とは、婚姻の意思を持って夫婦共同生活を営み、社会的にも夫婦として認められているにもかかわらず、婚姻の届出をしていないため、法律上の夫婦として認められない関係のことをいいます。
内縁として法的に婚姻に準ずる扱いを受けるためには、社会的にも事実上婚姻としての実質を備えた男女関係でなくてはなりません。
内縁の成立には、当該男女間に①婚姻意思があること、②これに基づいた共同生活があることが必要です。婚姻意思の存在については、結婚の儀式の有無や親族・知人ら周囲の関係者の認識、共同生活の内容、継続状態など一定の客観的事情をもって判断されることとなります。
内縁関係にある者は、婚姻関係に準じた法的保護を受けることができます。
したがって、内縁の相手方が関係を一方的に解消した場合は、離婚の場合と同様、財産分与や慰謝料を請求することができます。

現在離婚を考えているのですが、離婚に伴う財産分与や慰謝料の具体的な請求手続について教えてください。

離婚と同時に財産分与、慰謝料を請求する場合は、まず、離婚それ自体に関する相手方との話し合いと併せて、財産分与の対象・分与の割合・分与の方法や、慰謝料の金額・支払方法などについて話し合いを試みるのが一般的です。
相手方との話し合いがまとまらなくても、いきなり訴訟を提起するのではなく、まず家庭裁判所に対して離婚、財産分与及び慰謝料の支払いを求める調停を申立てる必要があります(調停前置主義、家事法257条1項)。
調停で話し合いがまとまらず、調停不成立となれば、家庭裁判所に対して、離婚と併せて財産分与及び慰謝料の支払いを求める訴訟を提起することになります(人訴17条)。

離婚成立後に財産分与、慰謝料を請求することはできますか?

離婚が成立した後でも、財産分与及び慰謝料の支払いを求めて、家庭裁判所に対して調停を申立てることができます。ただし、以下に述べるような時間的成約があります。
まず、財産分与について、離婚のときから2年を経過した場合は、財産分与自体を求めることができません(民法768条2項)。この2年は除斥期間と考えられており、事項とは異なる中断という概念がありません。また、慰謝料について、通常、離婚のときから3年を経過した場合は、離婚に伴う慰謝料請求権は時効により消滅します(同法724条)。ただし、時効である以上、その進行が中断するということもあります。
時間的成約にかからないことを前提に、以下、場合分けして説明します。
(1)財産分与のみを求める場合
家庭裁判所に審判を申し立てることもできますが、まずは調停を申し立て、話し合いによる解決を図る例が多いようです。調停で話し合いがまとまらなければ、審判に移行します(家事法272条4項)。
(2)慰謝料のみを求める場合
家庭裁判所に調停を申し立てることもできますが、話し合いによる解決の見込みがない場合などは、地方裁判所に訴訟を提起することもできます。慰謝料については、いきなり訴訟を提起する例も多く見受けられます。なお、調停での話し合いがまとまらない場合、審判への移行を求めることはできないので、調停を取下げ、あるいは調停不成立としたうえで、地方裁判所に訴訟を提起することになります。
(3)財産分与と慰謝料を併せて求める場合
同一手続において財産分与と伊佐領を併せて求めるのであれば、家庭裁判所に対し、調停を申し立てることになります。財産分与について相手方が応じない場合は審判に移行することになりますが、慰謝料について相手方が応じない場合は調停を取下げ、あるいは調停不成立としたうえで、地方裁判所に訴訟を提起することになります。

夫から、慰謝料300万円を支払うから離婚をしてほしいと言われて書面で合意をし、別居をして、離婚届を出そうとしたのですが、離婚届を出す直前に、元夫から、「合意は取り消す。夫婦間の契約はいつでも取消しすることができる。」と言われました。私は、そのまま離婚届を出しましたが、300万円の支払いを元夫に請求することはできないのでしょうか。

民法754条は、「夫婦間でした契約は、 婚姻中、いつでも、夫婦の一方からこれを取り消すことができる」と定めています。夫は、この条文を根拠に300万円を支払う合意を取り消そうとしたと考えられます。しかし、判例(最判昭和42年2月2日(民集21巻1号88頁))は、婚姻が実質的に破綻している場合には、民法754条による取消をすることができないとしています。そのため、離婚協議を経て別居をした後は、婚姻は実質的に破綻しているといえるので、民法754条による取消をすることはできないことになります。つまり、民法754条の定める「婚姻中」とは、「単に形式的に婚姻が継続していることではなく、形式的にも、実質的にもそれが継続していることをいうもの」と解釈することになります。今回の件では、夫側が取消をしようとした時点では、合意の取消をすることはできないことになります。

遺言・遺産相続について

遺産相続でもめています。遺言書があるのですが、公正証書で作ったものでなくとも、効力はあるのですか?

公正証書で作られたものでなくとも効力はあります。
ただし、公正証書でない遺言書の場合、偽造されたものでないか、遺言者が遺言書を作った時に意思能力がなかったのではないか、遺言書はむりやり作らされたものではないか等が争いになることが多いです。

兄が父の遺産を独り占めしています。たしかに、遺言書には、全財産を兄に相続させると書いてありましたが、理不尽だと思っています。兄が全財産を独り占めすることは法的に認められるのでしょうか?

一定の相続人には遺留分が認められています。ですので、遺留分減殺請求権を行使すれば、一定の限度で一部の相続財産を取得することは可能です。
もっとも、遺留分減殺請求権が行使できる期間には制限がありますので、遺留分減殺請求権を行使する場合は、早めに行使した方がよいと思われます。
なお、民法1042条は、「減殺の請求権は、遺留分権利者が、相続の開始及び減殺すべき贈与又は遺贈があったことを知った時から1年間行使しないときは、時効によって消滅する。相続開始の時から10年を経過したときも、同様とする。」と定めています。

母が亡くなる直前に、母と同居の長男が、母の銀行口座から何百万円も出金していたのではないかと私は疑っています。調査する方法はありますか?。どうすればいいでしょうか?

調査する方法はあります。
お母様の承諾のもとに出金したのか等の事情によりますが、出金者に対して法的な請求をすることができる可能性があります。
私は、同種の事件をこれまで3件受任して取り扱った経験があり、また、多くのご相談も受けてきましたが、証明できるか否かの問題もありますので、詳しくは法律相談をご予約ください

私も高齢になってきました。子ども達があとでもめないように遺言書を書こうと思うのですが、遺言書の書き方の相談にものってもらえますか?。弁護士さんは、私が死んだ後の相続争いについて仕事をするだけなのですか?

もちろん、遺言書の書き方のご相談も承っております。
弁護士は、相続争いが発生してから仕事をするだけではありません。また、遺言内容を実現するため、遺言執行者に就任することも可能です。
遺言書があるために争いになる事案もありますが、むしろ、遺言書がないために争いが起こることの方が多いと思います。
ですので、私は、「遺言書は、人生最後の親心で作るもの」と考えています。

母に遺言書を書いてもらいました。私に自宅不動産を相続させるという遺言なのですが、遺言書で登記することはできますか?

遺言書が公証役場で作った公正証書遺言であれば、公正証書遺言を使って登記をすることができます。
そうではなく、自筆のもの(自筆証書遺言)の場合、家庭裁判所で検認手続をする必要があります。
家庭裁判所で検認手続をすると、自筆証書遺言書に検認調書を付けてもらえます。
この検認調書付きの自筆証書遺言書で登記をすることができます。
検認手続のみのご依頼も可能ですし、登記をする司法書士のご紹介もしています。お気軽にご相談ください。

父が死亡しましたが、長らく音信不通で、どの程度債務があるか分かりません。亡父は不動産を所有していたので、相続したいのですが、多額の借金があるかもしれないと思うと、相続するのは恐ろしく、放棄してしまうことも考えています。どうしたらよいでしょうか?

相続の限定承認をする方法があります。
お父様の残した財産の範囲で負債を引き継ぐので、「損」はしません。
また、多額の負債があることが判明したとしても、限定承認者には、先買権があるので、不動産の時価相当額を払えば、お父様の不動産を競売手続によらずに取得することができます。
限定承認するためには、色々な要件があり、また、3ヶ月の期間制限があるので、なるべく早めにご相談にいらしてください。被相続人の債務を調べるノウハウもお教えします。

父が死亡しましたが、長らく音信不通だったため、死後4ヶ月経ってから、死亡を知りました。相続放棄や限定承認の期間制限は3ヶ月ということですが、死後3ヶ月以上経っているので、もう相続放棄や限定承認することはできないのですか?

期間制限は、「死後」3ヶ月というわけではありません。「自己のために相続の開始があったことを知った時」から3ヶ月です。ですので、相続放棄や限定承認をすることは可能です。
さらに、「自己のために相続の開始があったことを知った時」を柔軟に解釈する判例もあり、また、期間を伸ばす手続もあります。
もっとも、相続財産の一部を処分したりすると、相続放棄や限定承認することができなくなるので、注意が必要です。
相続放棄や限定承認をお考えの方は、早期にご相談にいらしてください。

父が死亡しましたが、兄弟とは長らく音信不通で、兄弟が今どこにいるのか全く分からず、電話番号も分かりません。不動産等の財産があり遺産分割をしたいのですが、どうすればよいですか?

弁護士が職務上請求をして、そのご兄弟の住民票や戸籍の附票を取得して、兄弟の現住所を割り出すことができます。
しかし、ご兄弟が住民票上の住所には住んでおらず、郵便物等も届かない状態のため行方不明の場合は、裁判所に不在者財産管理人を選任してもらい、不在者財産管理人を遺産分割の当事者として遺産分割を行う方法があります。

先日父が死亡しました。父からは、私に有利な遺言書を作っていたと聞いていました。しかし、遺言書は見つかりません。おそらく、父と同居していた私の兄が遺言書を隠したのだと思います。そのような兄に相続分は認められますか。

最高裁平成9年1月28日判決は、遺言を隠匿したことだけではなく、それによって不当な利益を得る目的があったことが認められなければ,相続欠格事由には該当しない旨を判示しました。
そのため,同居していた兄に,遺言を隠匿することによって不当な利益を得る目的が認められないと,兄に相続分が認められてしまうことになります。

父が遺言を残していたのですが、遺言書の文面が曖昧で内容が一義的でありません。そのような遺言書を解釈するために、遺言外の事情を用いることが許されるのでしょうか?

遺言書の解釈に際しては,遺言書の文言だけでなく,遺言以外の諸事情を遺言者の真意の探求のための資料として利用することが認められます。
しかし,遺言書の文言からかけはなれた解釈をし,遺言の意味内容を実質的に修正するようなことは,許されません。

遺言者が負っていた特定の債務を特定の相続人に相続させる旨の遺言がなされ、遺言執行者が選任されました。しかし、遺言執行者が債務の弁済に必要な措置をとってくれません。遺言者の債権者は、遺言執行者を被告として訴訟を提起して、債務を回収することはできますか。

東京高裁平成15年9月24日判決(金法1712号77頁)は、「遺言の中に相続債務を特定の相続人に相続させる文言がある以上、遺言執行者にこれを執行するための処置を構ずべき権限及び義務があると解される」と判示し、遺言者の債権者が、遺言執行者を被告として、遺言者が負担していた債務の履行を求める訴訟を提起できると判断しています。
この東京高裁判決によれば、遺言の中に相続債務を特定の相続人に相続させる文言がある場合は、遺言執行者に被告適格があることになります。

遺産である不動産から生じる賃料収入は遺産分割を経なければ相続人は自分の取り分の分配を受けることができないのでしょうか?

相続開始から遺産分割までの間に、遺産である不動産から生じる収入は、遺産分割の対象とはならず、発生と同時に相続分に応じて各共同相続人に確定的に帰属するという考え方が平成17年9月8日の最高裁判決により明確にされました。
そのため、被相続人死亡後に生じた賃料は、その不動産の帰属が遺産分割等で決まるまでの間は、遺産分割を経なくても、各相続人に相続分に応じて帰属します。
相続分に応じた額の支払いを賃借人に請求することもできますし、他の相続人が自己の相続分に対応する額を受領した場合は、その相続人に対し自己の相続分に対応する額の支払いを請求することもできます。
そして、不動産の帰属が、後日、遺産分割によって決まったとしても、不動産を得られなかった相続人が不動産を得た相続人に対して、賃料を返還する必要はありません。
また、実務上は、遺産の分割の対象ではない賃料収入等についても相続人全員の合意により遺産分割の対象とするという取扱いがされることもあり、前述の最高裁判決もこの取り扱いを否定するものではないと考えられています。そのため、共同相続人全員の合意により遺産分割手続を経て賃料の配分を受けるという方法をとることもできます。

父が亡くなりました。親戚や友人から借り入れがあったようなので相続放棄をしたいのですが、お墓の管理はどうなりますか?

お墓などの祭祀財産は、相続財産には含まれません。なので、相続放棄をした場合でも、お墓を引き継いで管理していくことには、何の問題もありません。

相続はいつから開始するものですか?

相続が開始するのは、被相続人の死亡時となります。相続の開始となる死亡には、①自然的な死亡②失踪宣告といった法律上の死亡も含まれます。詳しくは、以下の通りです。
①自然的死亡の場合…医師が死亡と診断した時点で、死亡届出時ではないので注意が必要です。
②失踪宣告の場合…普通失踪については、最後にその人の所在が確認できる日から7年間の期間が満了した日に死亡したものとみなされます。。
※生死不明というのではなく、死亡したのは確実といえるのですが、死体の発見ができないという場合には、その取り調べを行った官公署が死亡地の地区村長に死亡の報告をし、戸籍上死亡という記載がなされる「認定死亡」というものもあります。

預貯金と現金は、相続人にどのように相続されますか?

1:現金について現金は、いわゆるモノと同様に扱われます。そのため、各相続人の相続分に従って当然に分割して相続されるのではなく、遺産分割の手続を経て相続されます。。
2:預貯金について平成28年12月19日(最大決平成28年12月19日(家判9号6頁))に最高裁決定が出て、従来の判例が変更されました。平成29年4月6日の最高裁判決(最一小判平成29年4月6日(家判11号66頁))も合わせると、以下のとおりと考えられます。
普通預金、通常貯金、定期貯金、定期預金、定期積金については、各相続人の相続分に従って当然に分割して相続されるのではなく、遺産分割の手続を経て相続されます。そして、定額貯金、当座預金、別段預金についても、同様であると考えられています。なお、判例変更される前は、預貯金は、各相続人の相続分に従って当然に分割して相続されると解釈されており、例外として、相続人全員が遺産分割の対象とすることについて同意をした場合には、遺産分割協議の対象とすることができるとされていました。

10年間一緒に住んでいた内縁の夫が死亡しました。私と内縁の夫との間には子どもが1人いて、子どもは認知をしてもらっています。私と私の子どもは、内縁の夫の遺産を相続することができますか?

法定相続人になるのは、「配偶者」と「血族相続人」ですが、この「配偶者」とは、法律上の婚姻関係がある者を指します。そのため、内縁関係や愛人関係にある者は法定相続人になりません。内縁関係や事実婚の場合では、どんなに長い間生活を共にしていたとしても相続権は生じません。また、内縁関係や事実婚をしていても、法定相続人にはならないため、遺留分も寄与分もありません。
しかし、内縁関係や事実婚の男女間に生まれた子ども(非嫡出子)については、認知がされている子は、父親の相続人になることができます。
以前は、非嫡出子の相続分は、婚姻関係にある男女間に生まれた子(嫡出子)の取り分の2分の1と規定されていましたが、最高裁判決と平成25年の民法改正により、現在では、非嫡出子であっても、法定相続分は嫡出子の相続分と同一になりました。

会社を経営していた父が亡くなりました。父は、会社の債務を連帯保証しているそうです。父の相続人は、私と兄になり、兄は父の会社も継いでいます。会社の連帯保証債務は、会社を継いだ兄だけが負うものなのでしょうか?

会社の負債は、当然に、会社の代表取締役の負債と同視されるわけではありません。原則として、会社の負債と代表取締役個人の負債は別のものです。
しかし、代表取締役が個人として、主債務者である会社の連帯保証人になっている場合は、連帯保証人の死亡により、(相続人が相続放棄をしない限り)、連帯保証人の地位を相続して返済をしていく義務が生じます。その責任は、各相続人がそれぞれの法定相続分の範囲で負うことになります。ですので、お父様が連帯保証している金銭債務の半分の限度で、あなたも連帯保証債務を負うことになります。
この点、遺産分割協議をして、会社を継いだお兄様だけが連帯保証人としての地位を相続すると決めることも可能ですが、そのような遺産分割協議をしても、連帯保証の債権者はそのような遺産分割協議に拘束されません。債権者は、あなたに法定相続分の範囲で連帯保証に基づく金銭債権の請求をすることができます。もちろん、債権者が、あなたに対して一切金銭請求をしないことを同意してくれれば(法的には、お兄様のした免責的債務引受を承諾するという意味です。)、債権者の同意は有効となり、あなたに金銭請求をすることはできなくなります。

子どもから、毎日ひどいことを言われ続けています。このような状況の中で、子どもに遺産を渡したくないと考えるようになりました。どのような対応がありますか?

遺留分を持つ推定相続人が、被相続人に対して虐待をしたり、重大な侮辱をしたり、著しい非行があったときには、被相続人が家庭裁判所に推定相続人の廃除を請求することが認められています(民法第892条)。
廃除という制度は、遺留分減殺請求権も含めた相続権が剥奪される強力な効果を有するため、廃除された推定相続人は、遺留分さえも手に入れることができなくなります。
このように、強力な効果を有するものなので、被相続人に対する虐待、重大な侮辱、著しい非行については、その行為が、被相続人との家族的共同生活関係を破壊させ、その修復が著しく困難なほどのものであるかという基準で判断されます(東京高決平成4年12月11日(判時1448号130頁))。
そうすると、ご相談の件は、「ひどいことを言われる」内容が、被相続人との家族的共同生活関係を破壊させ、その修復が著しく困難なほど重度のものである必要があります。
なお、推定相続人の廃除を認める審判が確定したのち、被相続人の戸籍のある市区町村役場に、審判書が確定したことを明らかにして、推定相続人の廃除の届出をしておくと、推定相続人が廃除された旨が戸籍に記載されますので、相続後の手続に役立つと思います。

父が亡くなり、遺産として自宅、アパート、預貯金、株があることが判明しました。相続人は私の母と成人した子(2人)です。どのような分割方法があるのか、教えてください。

相続については、必ずしも遺産を法定相続分で分配しなければいけないという決まりはなく、当事者間での合意があれば、どのように分配するのかは自由です。
その具体的な方法は、現物分割、代償分割、換価分割という種類に分けられます。遺産分割の審判においては、原則は現物分割であるとされ、特別の事由があると認められるときに代償分割ができます(家事事件手続法195条)。現物分割、代償分割に支障がある場合には、換価分割が行われることになります。
 現物分割とは、現金や不動産などを、特定の相続人が個別にそのままの形で相続することを言います。土地を分筆して、分筆後の土地をそれぞれの相続人が取得することも、現物分割に分類されます。一つの遺産に対して1人が引き継ぎますので、手続は簡単ですが、当事者間で不公平であると感じやすくなる可能性もある方法です。
 代償分割とは、相続人のうち遺産を多く取得した人が、他の相続人に対して、多く取得した分に見合う金銭を支払う方法です。公平な遺産分割が行えるメリットがある反面、債務負担を命じられる相続人に債務の支払資力がないと、代償分割をすることは難しいです。
 換価分割とは、当事者間の合意に基づく売却や現物分割が困難で、代償金の支払いによる代償分割もできない場合に、遺産を換価してその代金を分配する方法です。現金化して分割するので、簡単かつ公平な分割が可能になりますが、換価した代金は遺産ではないので、分配方法などについては調書に記載する必要があります。

亡くなった父の遺産を確認するために、不動産の登記を見たいのですが、他県所在の他人名義の不動産の登記簿謄本(登記事項証明書)でも取得することはできますか?

自分の所有する不動産以外の登記簿謄本(登記事項証明書)は取得できないと思い込んでいる方もいらっしゃいますが、他人所有かつ他県所在の不動産の登記簿謄本(登記事項証明書)を取ることができます。
法務局で直接取得する方法とオンラインで取得する方法があります。たとえば、法務局の窓口では、登記簿謄本・抄本交付申請書(登記事項証明書交付申請書)に記載をして入手することができます。もっとも、地番や家屋番号は、いわゆる「住所」(住居表示)の地番とは異なることがあるので気を付けて下さい。
なお、オンラインの場合は、登記・供託オンライン申請システムのホームページにアクセスして、取得することもできます。

夫が死亡しましたが,妻である私を死亡時の受取人とする生命保険金を遺していました。この保険金も遺産として分割しなければならないのでしょうか?

保険金請求権は受取人の固有の財産であるため、相続財産にはなりません。そのため、遺産分割の対象にはなりません。生命保険契約が遺産となるかどうかは、保険金受取人が誰と指定されているかにより結論が異なります。
契約者・被保険者・保険金受取人が夫である場合、夫は自己のために生命保険契約を締結したものとして、保険金請求権は夫自身の財産と評価され遺産となります。そのため、この場合は遺産分割の対象となります。
契約者・被保険者が夫で、保険金受取人として特定の者が指定されている場合、夫は他人のために生命保険契約を締結したと考えられるため、保険金受取人の固有の権利として、相続財産となりません。
なお、判例によると、相続財産とならないとしても、一定の場合には特別受益として持ち戻しの対象とされますので、その点はご留意ください。

父が先日亡くなりました。兄は生前独立するに際して家族で住む家を建ててもらっていますが、私は、父から何もしてもらっていません。このような場合、父の遺産を分けるにあたって兄が建ててもらった自宅について、どのような取扱いをすればいいのでしょうか?

共同相続人となる者の中に被相続(今回の件ではお父様)から遺贈を受けたり、一定の生前贈与を受けた者がいる場合には、相続分の前渡しをされたものと考えて、その者の相続分を減らすこととされています。この遺贈や一定の生前贈与を特別受益といい、相続の際の相続額は、この特別受益の額を持ち戻しして計算します。もっとも、被相続人が持ち戻し免除の意思表示をしている場合は、他の相続人の遺留分を侵害しない限り、特別受益者の相続分を減らさないこととされていますので、その点はご留意ください。

孫を養子にした場合,基礎控除額が増えることなどにより,相続税の節税効果があると税理士に言われました。いわゆる節税を目的とした養子縁組も民法上有効でしょうか。

縁組は,「当事者間に縁組する意思がないとき」「縁組の届出をしないとき」に限り無効になるとされています(民法802条各号)。最三小判平成29年1月31日民集71巻1号48頁は,節税目的であっても「当事者間に縁組する意思がないとき」にはあたらず、節税目的の養子縁組も有効と判断しています。すなわち,最高裁は,養子縁組は,嫡出親子関係を創出し,養子を養親の相続人にする制度である一方,これによる節税効果は,相続人の数に応じて基礎控除額を算定するものとする相続税法規定によって生じるものであるとしました。そして,相続税の節税の動機と縁組をする意思は,併存しうるものであると判断しました。そのため,いわゆる節税を目的とした養子縁組も縁組意思があれば,民法上有効となることになります。
なお,基礎控除額の算定の基礎となる相続人の数は、「その被相続人に実子がある場合又はその被相続人に実子がなく、養子の数が1人である場合は1人、その被相続人に実子がなく、養子の数が二人以上である場合は2人」とされており(相続税法15条2項各号)、人数制限がある点に注意が必要です。

死亡した父の遺産である預金を解約し,解約金を,葬式費用,治療費の支払に充て,また,仏壇・墓石の購入費用に充てました。相続放棄する前に相続の対象財産を処分すると放棄できなくなると聞いたことがあるのですが,この場合でも相続放棄できますか。

遺産から,高額とはいえない葬式費用や治療費を支払った事案で,相続放棄の申述受理をした裁判例(大阪高決昭和54年3月22日(家月31巻10号61頁))があります。また,裁判例の中には,被相続人の預金を解約して,解約金を,高額ではない仏壇・墓石の購入費に充てた事案で,相続放棄の申述の受理を認めた裁判例もあります(大阪高決平成14年7月3日(家月55巻1号82頁))。
民法921条1号は,法定単純承認について定めているところ,その趣旨は,単純承認(相続の承認)をしない限りできないような行為をした場合に,黙示の単純承認があったと推認され,また,第三者から見ても単純承認があったと信じるのが当然であるから,一定の「処分」行為をもって単純承認とみなすことにしたと解釈されています(最一小判昭和42年4月27日(民集21巻3号741頁)ほか)。そのため,相続の承認の前に社会儀礼上当然にする行為は,「単純承認をしない限りできないような行為」と評価して,民法921条1号の「処分」にあたらないと解釈されることになります。そのため,仏壇・墓石の購入について,死者を弔うための自然な行動であり,その購入費用がいずれも社会的に不相当に高額でなければ,上記大阪高決が判断したように,「処分」に該当しないと解釈される余地があります。また,同様に,社会的に不相当に高額でなければ,遺産たる預金の解約金を葬式費用や治療費に充てても,上記大阪高決が判断したように,「処分」に該当しないと解釈される余地があります。
もっとも,上記は,最高裁の判断ではなく,また,大阪高決も,相続放棄の申述の受理を認めたに過ぎません。相続放棄の申述の受理が認められても,別途訴訟で相続放棄の有効性を争うこともできます。そもそも,社会の意識が変化していく中で,不相当に高額か否かを判断することは難しい面もあります。そのため,特に,仏壇と墓石の購入については,有効な相続放棄ができなくなるリスクがあるため,相続放棄を検討している方は,遺産たる預金を解約して仏壇と墓石の購入費に充てることについてはできるだけ控えた方がよいと考えます。

私は、自分に有利な内容の遺言書を預かっていますが、話を円滑に進めるため、これを使わずに遺産分割手続きをしたいと考え、他の相続人に対してこの遺言書の存在を秘密にしていました。ところが、後にこの事実が発覚してしまい、相続欠格事由である「隠匿」(民法891条5号)にあたると言われています。私は、相続人になれないのでしょうか。

「隠匿」にあたるかどうかについては、最小三判平成9年1月28日民集51巻1号184頁が、「隠匿」の故意の内容として、①相続人が遺言書の隠匿行為を行うにあたり、遺言書の発覚を妨げる結果が生じることの認識があること、②「相続に関して不当な利益を目的とするもの」であることの2つを必要としています。なぜなら、「隠匿」にあたるとした場合には相続人の地位を奪うような厳しい効果が生じるため、その分要件の該当性を制限的に検討すべきであるからです。
したがって、上記のような円滑な遺産分割手続をするために遺言書の存在を隠しているに過ぎず、自分の利益を図る目的がない場合については、①他の相続人による遺言書の発覚を妨げることは認識しているものの、②「相続に関して不当な利益を目的とするもの」とはいえないため、民法891条5号の「隠匿」にはあたらないと考えられます。

母が書いた自筆証書遺言の本文に押印がなく、遺言書を入れていた封筒のとじ目に2か所押印がありました。本文に押印がないことから無効になりませんか。

最二小判平成6年6月24日(集民172号733頁)は、遺言書本文の入れられた封筒の封じ目にされた押印がなされていることを理由に、民法968条1項の押印の要件にかけることはないと判断しています。この最高裁判決は、封筒と遺言書が一体のものとして作成されたことを重視しています。そのため、遺言書と封筒が一体のものとして作成されている場合は、遺言書本文に押印がなくとも、封筒上に押印があれば、無効とならないことになります。
なお、封筒と遺言書が一体のものとして作成されたと認定されない場合(たとえば、押印された封筒が発見時に開封済みであり、本当にその封筒の中に遺言書が入っていたか疑義がある場合等)は、封筒に押印がされていても、遺言に押印がなされているとは認定できないので無効である旨判断した裁判例(東京高判平成18年10月25日判時1955号41頁)もあるので、注意が必要です。

父が亡くなったのですが、相続放棄をしようと考えています。相続放棄をすると、お墓とかも無くなってしまうのですか?

相続放棄しても、お墓は取得することができます。
相続放棄をすると、遺産の相続ができなくなるのですが、お墓は祭祀財産であるため、遺産に含まれません。ですので、相続放棄をしたとしても、お墓は取得することができます。安心して相続放棄してください。

債権回収について

債権回収はスピードが大切というのはどうしてですか?仮差押ってなんですか?

取引先の経営状態が悪化している場合、早期に債権を回収しなければ、取引先が破産等により支払不能状態となり、債権が回収不能となるリスクがあります。破産された場合、ほとんどのケースで債権への配当はゼロか極めて少額となります。
仮差押とは、裁判所に申し立てをして、取引先の一定の財産を保全するもので、発令は極めて迅速に行われます。裁判所の措置というと、数ヶ月~年単位の時間を要するイメージがありますが、そのようなことはまずありません。
たとえば、取引先会社の銀行預金を仮差押した場合、預金は取引会社に支払われなくなるので、後日裁判をする等して勝訴すれば、仮差押した預金から債権を回収することができます。
もっとも、仮差押をするためには、担保金を供託する必要があり、また、仮差押後に取引先会社が破産申立をすると、優先的に債権回収することはできなくなります。
取引先会社が破産等の法的手続を取るより早く債権を回収する必要があります。

債権を回収できる可能性は、どのように判断すればよいですか?

まず、不動産の登記簿謄本を確認します。不動産の所有者が債務者自身であるか否かがポイントです。
次に、どのような抵当権が設定されているかを検討します。それにより債務者の経済状態をある程度推測できます。
不動産からの回収が期待できなくとも、就業先、取引先、取引銀行等が分かれば、債権回収の可能性があります。
詳細はご相談ください。

刑事事件について

自動車のスピード違反を犯して捕まってしまいました。道路交通法違反になるようですが、スピード違反でも、裁判で懲役刑の判決が下されることがあるのでしょうか?私は公務員なので、懲役刑の判決を受けると失職するので困るのですが。

かりに、高速道路で制限速度を時速80キロメートル以上超過した場合、正式な刑事裁判を受けることが多いです。その場合、懲役刑の判決が下される可能性は高いです。
そうなると、執行猶予付きの懲役刑判決であっても、国家公務員や地方公務員の方の場合、「当然失職する」ことになります(国家公務員法38条2号、76条、地方公務員法16条2号)。また、特定独立行政法人の役員及び職員は国家公務員とされていますので(独立行政法人通則法51条)、同様に失職します。
各種の資格(技術士、宅地建物取引主任者等)や職業(警備業、宅地建物取引業等)についても、登録取消事由等に該当することがあります(技術士法36条1号、3条2号、警備業法3条2号、宅地建物取引業法66条1項1号、5条1項3号、68条の2第1項1号、18条1項5号)。
たかがスピード違反と思っていると、非常に大きな代償を払うことがあるので、自動車の運転にはくれぐれもお気をつけください。

殺人事件等の重大犯罪の弁護も引き受けてもらえますか?

もちろん、お引き受けしています。松沼弁護士は、これまで殺人事件や強盗殺人事件等の重大犯罪も弁護を引き受けています。
他方で、山田弁護士は、犯罪被害者の方の損害賠償請求事件や刑事手続における被害者代理業務の受任もしています。
法的に認められた権利を実現することを目的に業務を行っておりますので、「殺人事件だから引き受けない」「被害者側の事件だから引き受けない」ということはありません。

感染症対策について

法律相談に行きたいのですが、新型コロナウィルスに感染するリスクを考えて躊躇しています。つくば法律事務所では、新型コロナウィルス感染防止のためにどのような対策をしていますか?

新型コロナウィルス感染のおそれは、まだ続くものと考えて対策を取っています。当事務所の取っている新型コロナウィルスの感染拡大防止対策は、以下のとおりです。

1、弁護士及び事務職員のマスク着用
2、相談者のマスク着用(マスクをご用意でない方にはマスクを配布しています)
3、来訪者の手指アルコール消毒徹底(アルコール消毒液を出入口に備え付けています)
4、弁護士及び事務職員の手洗い、手指のアルコール消毒(アルコール消毒は、事務所外に出る時及び事務所内に戻る際に,必ず行っています)
5、毎朝、アルコールを用いて、事務所内及び相談室内の拭き掃除実施
6、相談室をする使用ごとに、毎回必ずアルコールを用いて相談室内の拭き清掃実地
7、相談室内に、高さ60cm,幅90cmのアクリル板を設置
8、相談室内で弁護士とご相談者様の座る距離を約2m離す
9、一時間毎に事務所内の換気を実施
10、オンライン法律相談、電話法律相談の開始(有料)
今後も、状況を注視しながら必要な措置を行っていきたいと思っています。ご来所いただく皆様にも引き続き、ご理解ご協力をお願いいたします。

                

対応可能地域について

私は茨城県に住んでいるのですが、相手は大阪に住んでおり、大阪の裁判所で裁判を起こされてしまいました。そういう事件も対応してもらえるのですか?

茨城県外の裁判所に係属している事件の受任も可能です。私が出張し、大阪の裁判所に出頭して対応することもありますし、状況に応じて、係属している裁判所の付近に所在している他の法律事務所と協力し共同受任し、その裁判所に出頭してもらう形で対応することもあります。
他の地域の法律事務所と共同で受任した場合でも、裁判対応の打ち合わせは、原則として、当事務所においてテレビ電話等で行うので、依頼者の方は、打ち合わせのために遠方まで出向く必要がありません。
また、弁護士が遠方の裁判所へ出頭する際の出張旅費を軽減するメリットがあります。
日本全国全ての場所に協力関係にある法律事務所があるわけではありませんが、事件の内容に応じて、その分野を得意としている弁護士や係属裁判所付近に事務所を構えている弁護士と協力し、共同受任して対応することができることもありますので、遠方の裁判所に係属している事件でも、お気軽にご相談ください。

弁護士の経歴等について

山田弁護士の経歴欄に「早稲田大学大学院法学研究科修士課程修了」と書いてありますが、早稲田のロースクール卒ということでしょうか?

違います。
私が司法試験を受験していた時代には、法科大学院(ロースクール)制度は実施されていませんでした。
昔ながらの大学院の修士課程に在籍して民事法学についての修士論文を書きつつ、旧司法試験を受験し、旧司法試験に合格して弁護士となりました。

山田弁護士の経歴欄に「社会福祉士登録」と書いてありますが、これはなんですか?高齢者介護の仕事もしているのですか?

社会福祉士資格は、福祉分野の資格の1つですが、介護をするための資格ではありません。
社会福祉士資格は、認知症等により判断力の衰えた人の財産管理等をする「成年後見人」の任用資格の1つです。
今後の超高齢社会に対応するため、平成20年に国家試験を受験し資格取得しました。
なお、教育実習と同じく実習が課せられており、東京都の「杉並学園」で2週間実習させていただきました。
社会福祉士資格と弁護士資格を有していることから、茨城県社会福祉協議会、つくば市、土浦市で、審議会の委員等の役職を拝命しています。また、成年後見人等にも就任しています。

山田弁護士の経歴欄に中小企業庁から「経営革新等支援機関」に認定されたと書いてありますが、支援機関とはどういうものですか?

「中小企業経営力強化支援法」に基づき、中小企業に対して専門性の高い支援事業を行う経営革新等支援機関を認定する制度が創設されました。
認定制度は、税務、金融及び企業財務に関する専門的知識や支援に係る実務経験が一定レベル以上の個人、法人、中小企業支援機関等を、経営革新等支援機関として認定することにより、中小企業に対して専門性の高い支援を行うための体制を整備するものです。
地域に密着して、中小企業や個人事業者の方のサポートをすることにも力を入れているため、中小企業庁より認定を受けました。

経験の浅い弁護士よりも経験豊富な弁護士に依頼をしたいので、法律事務所を選ぶ際に、弁護士の経験を比較したいです。どのようにして調べればよいか教えてください。

まず、当事務所の弁護士の弁護士登録年次は、2005年であることをホームページに明示していますし、司法修習期が58期であることも明示しています。
他の法律事務所では、経験の浅い弁護士は、ウェブサイト上に弁護士登録年や司法修習期を掲載していないこともありますが、日本弁護士連合会の弁護士検索ページでその弁護士の氏名を入力すれば、弁護士登録番号を確認することができます。
弁護士登録番号の数字が小さい方が弁護士登録した時期が古く、数字が大きい方が弁護士登録した時期が最近である(経験年数が少ない)ということになります。
司法修習とは、裁判官、検察官、弁護士になるために、司法試験合格後に司法研修所で受ける研修のことです。そして、1947年から現在の司法修習制度になり司法修習生を採用しているので、その年に司法修習を受けて司法研修所を修了した方が第1期にあたります。法曹三者の間では、この司法修習期が、法曹としての経験の長さを示すものとして認識されています。そのため、50期の弁護士の方が70期の弁護士よりも法曹としての経験が長いということになります。
この司法修習期は、日本弁護士連合会の会員ページで検索することによって確認することができますが、一般の方は、会員ページを利用することができません。
しかし、一般の方でも、日本弁護士連合会の弁護士検索ページでその弁護士の氏名を入力すれば、弁護士登録番号を確認することができます。弁護士登録番号は、弁護士登録した順番ごとに番号が割り振られるため、弁護士登録番号が30000番の弁護士の方が、50000番の弁護士よりも、弁護士登録した時期が古いということになります。なお、山田昌典弁護士の弁護士登録番号は32883番になります。弁護士登録番号、修習期、経験年数の早見表を作成して公開している弁護士もいるので、こちらもご覧ください。

後見人と予防接種について

新型コロナウィルスの予防接種について、後見人に予防接種をすることについての同意権はありますか?

あくまで個人的な見解ですが、成年後見人には、同意権があると考えます。
まず、成年後見人には、原則として、医療行為の同意権はありません。
そこで、例外的に、予防接種について、予防接種法または予防接種法実施規則に基づいて、成年後見人に同意権限が付与されているかを検討することになります。
この点、同意権がないと考える見解は、おおむね、予防接種法8条2項及び9条2項が、それぞれ、「勧奨する」「必要な措置を講ずるよう努めなければならない」と定めているに過ぎないことを挙げて、これらの規定を根拠としては、同意権は導けないと主張しています。
私も、予防接種法8条2項及び9条2項を同意権の根拠とすることはできないと考えます。しかし、予防接種法実施規則5条の2は、「被接種者又はその保護者に対して、予防接種の有効性及び安全性並びに副反応について当該者の理解を得るよう、適切な説明を行い、文書により同意を得なければならない。」と定めており、保護者が同意することができることを前提にしており、また、予防接種法2条7項は、保護者とは親権者または後見人をいうと定めているので、予防接種法及び予防接種法実施規則5条の2により、同意権が付与されていると考えます。
厚生労働省健康局結核感染症課も、新型インフルエンザの予防接種について、「成年後見制度における医療同意については、成年後見人の事務外と解釈されるが、予防接種の実施については、予防接種法上の保護者に後見人は該当するため、後見人の同意を もって成年被後見人は接種を受けることができると考えている。」と述べつつ、予防接種法2条7項及び予防接種法実施規則5条の2を引用しています。
なお、たしかに、予防接種法8条2項及び9条2項は、予防接種を受ける努力義務等に関する規定ですが、これは、同条1項を見ても分かるとおり、対象者本人であっても、予防接種を受けることは「法的義務ではなく努力義務」であることを定めているものです。
この規定は、国が予防接種を義務として強制するのではなく、あくまで対象者の判断で予防接種を受けることを明らかにする規定といえます。
そうすると、この規定は、判断能力のある対象者本人は、対象者本人に予防接種をすることの同意をする権限を有しているが、予防接種を義務として強制されるわけではない(接種は任意)ということを明らかにしているに過ぎない規定となり、同様に、保護者(後見人)についても、保護者(後見人)が、対象者本人に予防接種をすることの同意をする権限を有しているが、予防接種を義務として強制されるわけではない(接種は任意)ということになります。

                

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